新そよ風に乗って 〜慕情 vol.1〜
そう言って、高橋さんがアーティチョークを口に運んだ。
「あっ、そう! 高橋君は、もういいや。 別に、面白くないから」
「何だ? それ」
明良さんが、高橋さんを静止するように右手を出してストップのジェスチャーをして見せた。
「陽子ちゃぁん。 クッキリ! スッキリ! ハッキリ! と、話しましょうねぇ」
「えっ? あ、あの……その……」
もう、何をどう話せばいいのか分からない。
助けを求めるように斜め前に座っている仁さんを見たが、仁さんも黙ってお酒を飲んでいて、こちらに視線を合わせてもらえなかった。
最大のピンチ!
「貴博。 陽子ちゃんに、何て告ったの?」
ハッ!
一瞬にして、明良さんの言葉でニューヨークのあの夜の出来事が思い出され、カーッと体が熱くなった。
「お前の全部、もらっていいか?」
高橋さんに、そう言われて……あの夜、高橋さんとひとつになれた。
そして、この右手にある時計を貰った。
同じ時間を刻んでいこうって……。
「それは……」
「言わなくていい」
私の言葉を遮るように、高橋さんが言った。
「そんなことは、今言わなくていい」
高橋さんは、ジッと私を見ながら静かにもう1度言った。
「何でだよ。 減るもんじゃないだろ?」
「いや、減る」
「即答かよ? だいたい、貴博に聞いてないの。 俺は、陽子ちゃんに聞いてんの」
また、何とも大人気ない感じの高橋さんと明良さんの争いが始まってしまったが、そのお陰で最大のピンチ! から解放された感じだった。
良かった。
一時は、どうなることかと思った。
「煙草が切れちゃったから、買いに行くの付き合ってくれる?」
仁さんが、いつの間にか隣に立っていた。
「あっ、はい」
絶妙なタイミングで誘ってくれて、仁さんが女神……否、天使に見えた。
言い争っている2人に気づかれないように、仁さんと静かに玄関の方へと向かう。
「寒いから、コート着ていけよ」
うっ。
気づかれた。
明良さんと言い争っているはずの高橋さんの声が後ろから聞こえて、恐る恐る振り返ると、私が座っていた椅子の背もたれにもたれながら、こちらを見ていた。
「あっ、そう! 高橋君は、もういいや。 別に、面白くないから」
「何だ? それ」
明良さんが、高橋さんを静止するように右手を出してストップのジェスチャーをして見せた。
「陽子ちゃぁん。 クッキリ! スッキリ! ハッキリ! と、話しましょうねぇ」
「えっ? あ、あの……その……」
もう、何をどう話せばいいのか分からない。
助けを求めるように斜め前に座っている仁さんを見たが、仁さんも黙ってお酒を飲んでいて、こちらに視線を合わせてもらえなかった。
最大のピンチ!
「貴博。 陽子ちゃんに、何て告ったの?」
ハッ!
一瞬にして、明良さんの言葉でニューヨークのあの夜の出来事が思い出され、カーッと体が熱くなった。
「お前の全部、もらっていいか?」
高橋さんに、そう言われて……あの夜、高橋さんとひとつになれた。
そして、この右手にある時計を貰った。
同じ時間を刻んでいこうって……。
「それは……」
「言わなくていい」
私の言葉を遮るように、高橋さんが言った。
「そんなことは、今言わなくていい」
高橋さんは、ジッと私を見ながら静かにもう1度言った。
「何でだよ。 減るもんじゃないだろ?」
「いや、減る」
「即答かよ? だいたい、貴博に聞いてないの。 俺は、陽子ちゃんに聞いてんの」
また、何とも大人気ない感じの高橋さんと明良さんの争いが始まってしまったが、そのお陰で最大のピンチ! から解放された感じだった。
良かった。
一時は、どうなることかと思った。
「煙草が切れちゃったから、買いに行くの付き合ってくれる?」
仁さんが、いつの間にか隣に立っていた。
「あっ、はい」
絶妙なタイミングで誘ってくれて、仁さんが女神……否、天使に見えた。
言い争っている2人に気づかれないように、仁さんと静かに玄関の方へと向かう。
「寒いから、コート着ていけよ」
うっ。
気づかれた。
明良さんと言い争っているはずの高橋さんの声が後ろから聞こえて、恐る恐る振り返ると、私が座っていた椅子の背もたれにもたれながら、こちらを見ていた。