新そよ風に乗って 〜慕情 vol.1〜
明日も休みだと思うと、色々なプレッシャーから解放されてゆっくり出来る。 そんな今日は、更に高橋さん達と一緒に過ごせているので、この上ない休日になっている。
リビングに射し込む、冬の陽射し。
束の間の暖かさを背中に感じながら、ゆっくりと時間が流れていく。
午後の日だまりの中、心地よい暖かさに誘われるように3人とも昼寝の真っ最中。
いつも忙しいから、疲れているんだろうな。
そんな3人の寝顔をずっと眺めていたい気持ちを抑えて、起こさないようにそっと食べ終わった空いたお皿を片付けて、キッチンに散乱したトレーやゴミを静かに纏めていた。
一通り片付いたので、また使うかもしれないお皿とグラスを洗っていると、いきなり後ろから両肩を掴まれた。
ヒッ!
慌てて振り返ると、高橋さんが立って居た。
いつの間に?
「そんなのは、後でいいから。 お前も少し昼寝しろ。 まだ夜まで続くから、もたないぞ」
うわっ。
「あ、あの、まだあと少し洗い物が残っているので……」
「い・い・か・ら」
洗い物もそこそこに、引っ張られるように寝室に連れて行かれると。高橋さんはドアを閉めて鍵を掛けた。
「キャッ……」
そして、そのまま一緒に倒れ込むようにしてベッドに寝かされ、一瞬にして間近に迫った高橋さんの顔に、思わず顎を引いて距離を保とうとした。
「このまま此処でするのも、スリルがあっていいよな」 
ハッ!
う、嘘でしょう?
怪しげに高橋さんは微笑むと、私の顎を左手で少し持ち上げた。
「ちょっ……ちょっと、待って下さい」
同時に、高橋さんの右手が私の左頬を包む。
「た、高橋さん」
制御出来ないぐらい心臓の鼓動が早くて、今にも破裂しそうな感じだ。
「make loveする?」
「な、何言って……」
口元を少し吊り上げた高橋さんが、妖艶に囁く。
「ちょっ……じょ、冗談は、やめて下さい」
「俺は、何時だって本気だ」
そんな……む、無理。
両手を頭の上で束ねられ、高橋さんの左手で押さえられてしまった。
明良さんと仁さんに、気づかれたら大変。
起こしてしまわないように、必死に小声で訴える。
「や、やめて……離して下さい。 高橋さん。 酔ってるんですか?」
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