新そよ風に乗って 〜慕情 vol.1〜
さっきは、私の声が聞こえていなかったんだと思っていたが、今は絶対聞こえていたはず。
現に、返事がないことに中原さんが不思議そうに顔をあげて、高橋さんを見ている。
中原さんの席は、私の席から見て高橋さんの席より奥。 その中原さんが気づいて、高橋さんが気づかないなんて……。
高橋さんは、パソコン画面を見たまま微動だにしない。
何か、考えごとでもしているのかな。
もう1度、名前を呼ぼうとしたが、先に中原さんが高橋さんに声を掛けた。
「高橋さん。 電話みたいですよ」
「ああ、悪い。 何番?」
高橋さんは、我に返ったように中原さんが指差した私の方を見た。
「2番に、社長室からお電話です」
「ありがとう。 お待たせしました、高橋です……はい。 かしこまりました。 ありがとうございます。 直ぐに伺います」
高橋さんは受話器を置くと、脇に置いてあったジャケットを無造作に掴み、立ち上がって羽織りながら書類を抱えた。
「ちょっと、社長室に行ってくる」
「いってらっしゃいませ」
何となく気になって、高橋さんの後ろ姿を目で追いながら見送った。
「中原さん。 高橋さん。 どうかしたんでしょうか?」
「うーん……。 きっと、疲れてるんじゃない?」
そう言うと、中原さんは書類に視線を戻したので、気になりながらも処理を続けた。
高橋さん。
どうしちゃったんだろう?
何か、悩みでもあるのかな?
気になりつつも、頭の片隅に無理矢理追いやって気を紛らわすように仕事に集中し、電卓を夢中で叩いた。
何とか、無事に10日の締めを乗り切ると、1月は比較的余裕のある月なので、5、10日以外は平穏な日々になる。
定時で上がって、いつも通りまゆみと30分お茶をして帰る日が続いた。
今週末は、来週月曜日が成人の日なので3連休になり、年末に実家に帰っていて途中になってしまっていた部屋の片付けをしたりして、のんびりとした3連休を過ごしている。
高橋さんとも連絡はしていなかったので、会う約束もしていなかったし、中原さんの言っていたことが気に掛かり、もし疲れているのだったらこの連休はゆっくり休んで欲しいと思った。
現に、返事がないことに中原さんが不思議そうに顔をあげて、高橋さんを見ている。
中原さんの席は、私の席から見て高橋さんの席より奥。 その中原さんが気づいて、高橋さんが気づかないなんて……。
高橋さんは、パソコン画面を見たまま微動だにしない。
何か、考えごとでもしているのかな。
もう1度、名前を呼ぼうとしたが、先に中原さんが高橋さんに声を掛けた。
「高橋さん。 電話みたいですよ」
「ああ、悪い。 何番?」
高橋さんは、我に返ったように中原さんが指差した私の方を見た。
「2番に、社長室からお電話です」
「ありがとう。 お待たせしました、高橋です……はい。 かしこまりました。 ありがとうございます。 直ぐに伺います」
高橋さんは受話器を置くと、脇に置いてあったジャケットを無造作に掴み、立ち上がって羽織りながら書類を抱えた。
「ちょっと、社長室に行ってくる」
「いってらっしゃいませ」
何となく気になって、高橋さんの後ろ姿を目で追いながら見送った。
「中原さん。 高橋さん。 どうかしたんでしょうか?」
「うーん……。 きっと、疲れてるんじゃない?」
そう言うと、中原さんは書類に視線を戻したので、気になりながらも処理を続けた。
高橋さん。
どうしちゃったんだろう?
何か、悩みでもあるのかな?
気になりつつも、頭の片隅に無理矢理追いやって気を紛らわすように仕事に集中し、電卓を夢中で叩いた。
何とか、無事に10日の締めを乗り切ると、1月は比較的余裕のある月なので、5、10日以外は平穏な日々になる。
定時で上がって、いつも通りまゆみと30分お茶をして帰る日が続いた。
今週末は、来週月曜日が成人の日なので3連休になり、年末に実家に帰っていて途中になってしまっていた部屋の片付けをしたりして、のんびりとした3連休を過ごしている。
高橋さんとも連絡はしていなかったので、会う約束もしていなかったし、中原さんの言っていたことが気に掛かり、もし疲れているのだったらこの連休はゆっくり休んで欲しいと思った。