新そよ風に乗って 〜慕情 vol.1〜
「とにかく、矢島さん。 今日は15日だし、こんなことをしていても時間がもったいないから、仕事を始めよう」
「えっ……あっ、はい」
「矢島さんは、こっちのいつもの書類の検算と捺印のチェックをしてくれる? 俺は、部長印を高橋さんの代わりに押していいって言われてるから、チェックしながら押していくから」
「はい」
取り敢えず、今日は中原さんと出来る限り頑張ろう。
高橋さんに、後で電話してみようかな……。
書類に目を通しながら、そんなことを思って気を紛らわすように電卓を叩いた。
それでも、やっぱり気になってしまうのが女心というか、気が緩むと駄目だ。
高橋さんが席に居ないというだけで、寂しい気持ちになってしまう。
遅いお昼を食べに社食に向かう途中、ふと思い立ち、高橋さんに電話をしてみたい気持ちを抑えきれなくなって、誰かに聞かれないようあまり人気のないエレベーターホールの奥にある倉庫に向かった。
緊張しているせいで、携帯を持つ手が震えている。
最初に、何て言おう。
そんなことを考えながら、呼び出し音が鳴り出すのを待つ間、こんなにも時間が掛かるものかと苛立った。
しかし、1回もコール音が鳴ることもなく、冷たい機械的な女の人の声がした。
「お掛けになった電話番号は、電波の届かない場所におられるか、電源が……発信音の後にメッセージを……」
伝言は入れずに、電話を切った。
留守電?
それとも、運転中なのかな?
こうなると、電話を掛ける前よりもますます不安になってしまった。
どうしたんだろう……。
高橋さん。
今、何処にいるの?
せめて、声が聞きたい。
頭の中が高橋さん一色になっていて、うどんをすすりながらボーッと、携帯のアドレス帳を見ていた。
た行……高橋貴博……あっ……。
そうだ!
「えっ……あっ、はい」
「矢島さんは、こっちのいつもの書類の検算と捺印のチェックをしてくれる? 俺は、部長印を高橋さんの代わりに押していいって言われてるから、チェックしながら押していくから」
「はい」
取り敢えず、今日は中原さんと出来る限り頑張ろう。
高橋さんに、後で電話してみようかな……。
書類に目を通しながら、そんなことを思って気を紛らわすように電卓を叩いた。
それでも、やっぱり気になってしまうのが女心というか、気が緩むと駄目だ。
高橋さんが席に居ないというだけで、寂しい気持ちになってしまう。
遅いお昼を食べに社食に向かう途中、ふと思い立ち、高橋さんに電話をしてみたい気持ちを抑えきれなくなって、誰かに聞かれないようあまり人気のないエレベーターホールの奥にある倉庫に向かった。
緊張しているせいで、携帯を持つ手が震えている。
最初に、何て言おう。
そんなことを考えながら、呼び出し音が鳴り出すのを待つ間、こんなにも時間が掛かるものかと苛立った。
しかし、1回もコール音が鳴ることもなく、冷たい機械的な女の人の声がした。
「お掛けになった電話番号は、電波の届かない場所におられるか、電源が……発信音の後にメッセージを……」
伝言は入れずに、電話を切った。
留守電?
それとも、運転中なのかな?
こうなると、電話を掛ける前よりもますます不安になってしまった。
どうしたんだろう……。
高橋さん。
今、何処にいるの?
せめて、声が聞きたい。
頭の中が高橋さん一色になっていて、うどんをすすりながらボーッと、携帯のアドレス帳を見ていた。
た行……高橋貴博……あっ……。
そうだ!