13番目の呪われ姫は今日も元気に生きている
「ヘビさんの名前なんにしましょう」
とベロニカの首に巻きつきすっかりベロニカに懐いてしまった毒ヘビと目を合わせて、ニョロ子とかどうです? と尋ねるがヘビに首を振られたのでニョロ子は却下らしい。
本日伯爵が企てた暗殺は毒蛇による毒殺。連れてきたヘビは、最初ベロニカに威嚇し襲いかかったが、ベロニカがヘビに笑いかけた瞬間に大人しくなり、次の瞬間にはベロニカにべったりするほど懐いてしまった。
「ふふ、それにしても伯爵。私に生きていて欲しいって言ってくださったのに、暗殺は律儀に続けてくださるのですね!」
本当に伯爵は真面目なんですからっと歌うように言葉を紡ぐベロニカを見ながら、
「それが今のところ俺の唯一の存在価値でしょう。そうじゃなかったら、俺が姫に近づける理由なんてないんですよ」
ベロニカがヘビを手懐けるまでの光景をじっと見ていた伯爵は、いつも通り無愛想な顔でそう言った。
「さて、今日の暗殺も失敗してしまった事ですし、お茶の時間にしましょうか。今日はよもぎ茶を作ったんですよ」
沢山生えている場所を見つけちゃってと上機嫌でお手製のお茶を用意するベロニカに、
「暗殺は失敗しましたが、得るものはありました」
と伯爵は淡々と話す。
「俺も騙されましたよ。暗殺が失敗する要因は全部呪いの効果だと信じ込んでいました」
呪われ姫であるベロニカへの暗殺は100%失敗する。
ナイフで刺せば血が触れた瞬間ナイフが朽ち果て刃は届かず、その細い首に紐を巻きつければ首が絞まるよりはやく花飾りに早替わり。
呪いの効果で彼女の命を脅かす全ては無効化されるからだ。
「姫、あなた魔法が使えるでしょう?」
ずっと不思議だったんです、と今までの暗殺データを記録したノートをめくりながら伯爵は確信に満ちた声でそう言った。
どうして、離宮に追いやられているはずのベロニカがこっそり王城に出入りできているのか。
なぜ、人目を引くほど美しくこんなに目立つ容姿をしている彼女が、誰にも気付かれることなく、情報や食べ物や物品を王宮から持ち出して来れるのか。
呪いの解呪方法を探すとともにそれらの現象の合理的な説明を伯爵はずっと探していた。
魔法なんてほとんどの人間が信じないような非科学的な存在だが、稀にそういう体質の人間がいるらしいと聞いたことがある。
ベロニカがそうである可能性を念頭に仮説を立て、そして今日の暗殺でそれが立証できた。
「毒蛇が暗殺道具であるならば、ヘビ自体が別の物に変質して無効化されなければ、今までの呪いの法則との整合性が取れない。でもそのヘビは今も生きていて姫に懐いている。ということは、天寿の命の呪いが発動する前に姫がなんらかの方法で使役した、と考える方が自然です」
合ってますか? と尋ねる伯爵に、
「騙しただなんて人聞きの悪い。聞かれなかったから答えなかっただけです」
ふふっとイタズラがバレた子どものように笑ったベロニカは、
「いつか、私が魔女なのだとその正体に辿り着く人がいるなら、それはきっと伯爵なのだろうと思っていました」
猫のような金色の瞳を瞬かせ静かな口調でそういった。
とベロニカの首に巻きつきすっかりベロニカに懐いてしまった毒ヘビと目を合わせて、ニョロ子とかどうです? と尋ねるがヘビに首を振られたのでニョロ子は却下らしい。
本日伯爵が企てた暗殺は毒蛇による毒殺。連れてきたヘビは、最初ベロニカに威嚇し襲いかかったが、ベロニカがヘビに笑いかけた瞬間に大人しくなり、次の瞬間にはベロニカにべったりするほど懐いてしまった。
「ふふ、それにしても伯爵。私に生きていて欲しいって言ってくださったのに、暗殺は律儀に続けてくださるのですね!」
本当に伯爵は真面目なんですからっと歌うように言葉を紡ぐベロニカを見ながら、
「それが今のところ俺の唯一の存在価値でしょう。そうじゃなかったら、俺が姫に近づける理由なんてないんですよ」
ベロニカがヘビを手懐けるまでの光景をじっと見ていた伯爵は、いつも通り無愛想な顔でそう言った。
「さて、今日の暗殺も失敗してしまった事ですし、お茶の時間にしましょうか。今日はよもぎ茶を作ったんですよ」
沢山生えている場所を見つけちゃってと上機嫌でお手製のお茶を用意するベロニカに、
「暗殺は失敗しましたが、得るものはありました」
と伯爵は淡々と話す。
「俺も騙されましたよ。暗殺が失敗する要因は全部呪いの効果だと信じ込んでいました」
呪われ姫であるベロニカへの暗殺は100%失敗する。
ナイフで刺せば血が触れた瞬間ナイフが朽ち果て刃は届かず、その細い首に紐を巻きつければ首が絞まるよりはやく花飾りに早替わり。
呪いの効果で彼女の命を脅かす全ては無効化されるからだ。
「姫、あなた魔法が使えるでしょう?」
ずっと不思議だったんです、と今までの暗殺データを記録したノートをめくりながら伯爵は確信に満ちた声でそう言った。
どうして、離宮に追いやられているはずのベロニカがこっそり王城に出入りできているのか。
なぜ、人目を引くほど美しくこんなに目立つ容姿をしている彼女が、誰にも気付かれることなく、情報や食べ物や物品を王宮から持ち出して来れるのか。
呪いの解呪方法を探すとともにそれらの現象の合理的な説明を伯爵はずっと探していた。
魔法なんてほとんどの人間が信じないような非科学的な存在だが、稀にそういう体質の人間がいるらしいと聞いたことがある。
ベロニカがそうである可能性を念頭に仮説を立て、そして今日の暗殺でそれが立証できた。
「毒蛇が暗殺道具であるならば、ヘビ自体が別の物に変質して無効化されなければ、今までの呪いの法則との整合性が取れない。でもそのヘビは今も生きていて姫に懐いている。ということは、天寿の命の呪いが発動する前に姫がなんらかの方法で使役した、と考える方が自然です」
合ってますか? と尋ねる伯爵に、
「騙しただなんて人聞きの悪い。聞かれなかったから答えなかっただけです」
ふふっとイタズラがバレた子どものように笑ったベロニカは、
「いつか、私が魔女なのだとその正体に辿り着く人がいるなら、それはきっと伯爵なのだろうと思っていました」
猫のような金色の瞳を瞬かせ静かな口調でそういった。