13番目の呪われ姫は今日も元気に生きている
「当店、時間制を導入しておりまして。お二人とも盛り上がってらっしゃるところ大変恐縮ですが、店主としてはお支払い大丈夫かなぁって気になりまして」
にこにこにこにこと落ちた砂時計をずらりとテーブルに並べたベロニカは一番初めに渡した料金表をレグルから回収し、一番下を指差す。
「何もないが?」
不思議そうに首を傾げたレグルに、
「知ってます? 柑橘系の果物の汁って火で炙ると文字が出てくるって」
なかなか気づいてくださらないんだものとやや不服そうなベロニカが紙を炙る。
すると文字が浮かび上がり『時間制、砂時計一つに付き白金貨1万枚』と記載されていた。
「お二人ともお支払いがすでに国家予算10年分を優に超えてますけど、まだうちの離宮使います?」
お支払いは現金で♡とベロニカはドヤ顔で手を出した。
「冗談だろう?」
「いえ、この上なく本気ですけど。ねぇ、伯爵?」
私やると言ったらやる女ですよね? と負債を回収する気満々のベロニカに、
「ッチ。持って来たみかん1個足らないと思ったらコレか」
どこで使ったんだろうって思ってたと悔しそうに舌打ちする伯爵。
「あ、文字書いた残りの果汁はちゃんとスタッフが飲んでるので大丈夫です」
やってやったぜとドヤ顔で胸を張るベロニカに、
「客に出さないでください。あとスタッフなら社割してください」
伯爵は諦めたように白旗をあげた。
「今日は私の勝ちですね、伯爵!」
猫のような金の目を瞬かせ楽しげに笑うベロニカ。
そんな2人のやり取りを見て、
「……キース、お前いつもこんな事やってるのか」
レグルは呆れたような声を上げる。
「大抵は。飽きないでしょ、この人」
そう言った伯爵を見てレグルは驚いたように目を瞬かせる。
学園にいる時はいつも仏頂面で小難しい本ばかり読んでいた彼からは想像できないほど穏やかな顔をして楽しげに笑っていたから。
そして悟る。
常に退屈していた彼は、自身の興味を引く対象に出会ってしまったのだと。
「さて、伯爵には身体で払ってもらうとして、お兄様は何で払ってくださいます?」
にこっと微笑む美しい姫を前にレグルは肩を竦めると、
「ツケって事で。とりあえず手付けにコレはどうかな?」
入手困難なレア物だよと1枚の紙を差し出す。
「こ、コレは!!!?」
紙を受け取ったベロニカはキラキラと目を輝かせる。
「伯爵っ! 伯爵が制服着てますっ!! うわぁー昔から仏頂面だったんですねぇ!!」
「はぁ? アンタなんでこんなもの持って」
ベロニカの手元を覗き込んだ伯爵は見覚えのない写真に眉を顰める。
「同窓生特権。いざと言う時キースを脅そうと思って。コイツ昔から写真嫌いだから学生服とか超絶レアだよ?」
「いや、レアっていうかコレどう見ても盗撮……って姫何懐に仕舞おうとしてるんですか。返しなさい」
「嫌です! コレは私がお代としていただいたんです〜」
取り返そうとする伯爵から守るように袖口に仕舞ったベロニカは、
「貴重な伯爵のお写真。家宝にします」
お兄様グッジョブとベロニカは親指を立てる。
そんなベロニカを見たレグルは、
「私と仲良くするといい事があるよ、ベロニカ」
例えば、王立学園のアルバムとかと入手困難品の存在をチラつかせる。
「俺を売るなよ」
「将を射んとする者はまず馬を射よってな。そんなわけでキース、私は諦めないよ」
国の変革に犠牲はつきものだしとレグルはニヤッと笑う。
「歓迎します、お兄様」
ようこそ離宮へと掌を返したようにベロニカはレグルを歓待する。
かくして出会ってはいけない2人が運命的に出会ってしまったために、度々ぼったくりBARで非合法な取引が行われたり、伯爵が余計な苦労を背負う事になるのはまた別のお話し。
にこにこにこにこと落ちた砂時計をずらりとテーブルに並べたベロニカは一番初めに渡した料金表をレグルから回収し、一番下を指差す。
「何もないが?」
不思議そうに首を傾げたレグルに、
「知ってます? 柑橘系の果物の汁って火で炙ると文字が出てくるって」
なかなか気づいてくださらないんだものとやや不服そうなベロニカが紙を炙る。
すると文字が浮かび上がり『時間制、砂時計一つに付き白金貨1万枚』と記載されていた。
「お二人ともお支払いがすでに国家予算10年分を優に超えてますけど、まだうちの離宮使います?」
お支払いは現金で♡とベロニカはドヤ顔で手を出した。
「冗談だろう?」
「いえ、この上なく本気ですけど。ねぇ、伯爵?」
私やると言ったらやる女ですよね? と負債を回収する気満々のベロニカに、
「ッチ。持って来たみかん1個足らないと思ったらコレか」
どこで使ったんだろうって思ってたと悔しそうに舌打ちする伯爵。
「あ、文字書いた残りの果汁はちゃんとスタッフが飲んでるので大丈夫です」
やってやったぜとドヤ顔で胸を張るベロニカに、
「客に出さないでください。あとスタッフなら社割してください」
伯爵は諦めたように白旗をあげた。
「今日は私の勝ちですね、伯爵!」
猫のような金の目を瞬かせ楽しげに笑うベロニカ。
そんな2人のやり取りを見て、
「……キース、お前いつもこんな事やってるのか」
レグルは呆れたような声を上げる。
「大抵は。飽きないでしょ、この人」
そう言った伯爵を見てレグルは驚いたように目を瞬かせる。
学園にいる時はいつも仏頂面で小難しい本ばかり読んでいた彼からは想像できないほど穏やかな顔をして楽しげに笑っていたから。
そして悟る。
常に退屈していた彼は、自身の興味を引く対象に出会ってしまったのだと。
「さて、伯爵には身体で払ってもらうとして、お兄様は何で払ってくださいます?」
にこっと微笑む美しい姫を前にレグルは肩を竦めると、
「ツケって事で。とりあえず手付けにコレはどうかな?」
入手困難なレア物だよと1枚の紙を差し出す。
「こ、コレは!!!?」
紙を受け取ったベロニカはキラキラと目を輝かせる。
「伯爵っ! 伯爵が制服着てますっ!! うわぁー昔から仏頂面だったんですねぇ!!」
「はぁ? アンタなんでこんなもの持って」
ベロニカの手元を覗き込んだ伯爵は見覚えのない写真に眉を顰める。
「同窓生特権。いざと言う時キースを脅そうと思って。コイツ昔から写真嫌いだから学生服とか超絶レアだよ?」
「いや、レアっていうかコレどう見ても盗撮……って姫何懐に仕舞おうとしてるんですか。返しなさい」
「嫌です! コレは私がお代としていただいたんです〜」
取り返そうとする伯爵から守るように袖口に仕舞ったベロニカは、
「貴重な伯爵のお写真。家宝にします」
お兄様グッジョブとベロニカは親指を立てる。
そんなベロニカを見たレグルは、
「私と仲良くするといい事があるよ、ベロニカ」
例えば、王立学園のアルバムとかと入手困難品の存在をチラつかせる。
「俺を売るなよ」
「将を射んとする者はまず馬を射よってな。そんなわけでキース、私は諦めないよ」
国の変革に犠牲はつきものだしとレグルはニヤッと笑う。
「歓迎します、お兄様」
ようこそ離宮へと掌を返したようにベロニカはレグルを歓待する。
かくして出会ってはいけない2人が運命的に出会ってしまったために、度々ぼったくりBARで非合法な取引が行われたり、伯爵が余計な苦労を背負う事になるのはまた別のお話し。