ヘアゴム
3年生の借り物競争が終わり、私の元へ駆け足で戻ってきた陽色(ひいろ)先輩。



「ありがとう、莉珠(りじゅ)。ヘアゴム、助かった」

「いえ…。2位おめでとうございます…。陽央(ひなか)ちゃん、すごく悔しがってました……」



陽央ちゃんは私の友達で、すごく負けず嫌いな子です。



「2位を取ったっていうのに、褒めてくれないのか…。
兄に対しても厳しいなぁ…」

「すごく応援してましたよ! 誰よりも大きな声で!!」

「聞こえてた…。
莉珠の声も聞こえてた」

「そんなはずありません…。私の声は小さくて…」

「小さいけど、莉珠の声は聞こえたんだ。
俺って耳、良いね」

「良い…ですね…」

「莉珠。そのまま動かないで」



陽色先輩が視界から消えたと思うと、後ろから触れられた髪。
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