花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜



「そんなことどうしてわかるのですか!?」

「彼女からは、甘い花橘の香りがするんだ。だけど、君からは香水の甘ったるい香りしかしない。それに香道を極めている人なら“香水”をくさいほどつけるだなんてしないはずだ」


 おぉ……見事すぎる一刀両断。
 こんなふうに言われたら何も反論できない。それに両親の援護を期待している綾様だが、旦那様も奥様もショックを受けているようだった。
 まさか、完璧だと言われていた娘は偽の姿だったなんて信じたくもないか。


「……君と話している時間が無駄だな。当主、では午後には知り合いが訪ねてくると思うのでよろしく頼む」

「は、はい。分かりましたっ!」


 旦那様にいつものような貫禄な雰囲気は消えていて頼りなさそうな感じだった。長宗我部様は私を横抱きにすると「失礼する」と言い私をそのまま連れて櫻月の屋敷から出た。

 櫻月の門を出るとそこには馬車が停まっていた。馬車なんて始めて見た……すごい。


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