花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜
「馬車は初めてか?」
「はい。荷物を運ぶだけの簡素な馬車ならありますが、こんな素敵な馬車は初めてです」
私が長宗我部様にそう言うと「そうか」と言い吹き出すように声を出して笑い出した。
「な、何かおかしいこと言ってしまいましたか!?」
「いや、……馬車だけでこんなに感動されるとは思わなかったから。それに君の表情が可愛らしくて」
「……っからかわないでください!」
長宗我部さんは笑いながら馬車に乗せてくれて、向かい合って座った。