花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜



 皆が帰って行き、お片付けに戻ろうと屋敷に入る。先ほどまで香席をしていた部屋の片付けをして香間を出る。
 すると、何か懐かしい音がした。なんの音か分からずキョロキョロさせた。


「勘違い、か」


 そう独り言を呟いて自室に戻ろうとした時、後ろから声をかけられる。


「……君は、櫻月紗梛か?」


 私の名を呼んだ男性は、とても麗しく美しい人だった。そして私にこう言った。




「――君は、華乃宮毘売の生まれ変わりだ」
 



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