花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜



「――それは、夏椿(なつつばき)という花だよ」

「……っ、 士貴様!? いつお帰りに?」

「今だよ。君がここにいるって松島に聞いたから」

「そうなのですね。お帰りなさいませ、士貴様」

「あぁ、ただいま。……この庭園は綺麗だろう、腕のいい庭師がいつも手入れをしてくれているから。この夏椿は、祖父が祖母が嫁入りの際に植えた花なんだ」


 へぇ……じゃあ、この家にとっても大切な花なのかな。



「俺も好きなんだ。だが、祖父とは会ったことはないんだけどね。けれどきっと祖母のこと大切にしていたんだろうなと感じるよ」


 会ったことのないのに、どうしてそう思えるのだろう……?


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