花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜
「いただきます」
まずお茶を飲むと、鼻にお茶の香りが入ってきて香りを楽しんでから一口のむ。旨みから甘味という順で口の中に広がった。
つい、「美味しい」と声に出してしまうくらい美味しい。湯呑みを置いて、黒文字を取り一口大に切って口に入れる。
「んん……! 美味しい」
「そうか、それは良かった」
士貴様は微笑むと、すぐに何か思い出したように私の名前を呼び話しかける。
「次の休日に櫻月家に行こうと思っている。私たちの婚姻について話し合いをしなくてはいけないからね。紗梛さんにはここで留守番していてほしいが、荷物整理する時間なかっただろう?」
「そうですね……」
まぁ、あんまり荷物はないだろうけど。あ、でも……あれだけは欲しいかも。