花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜
第一章
◇境遇
時は、優桜院の世。帝都では、一年中桜が咲いているため優桜院の世と呼んでいる。
「――紗梛、早く髪を結ってちょうだい」
「すみません」
そしてここは、帝都とは少し離れた結華と言われている郷。ここに住むほとんどがあやかしや神の末裔が軍事に就いている郷であり、ここを治めているのは縁結びの神・結葉龍神の末裔で由緒正しい家であり帝から公爵位を賜っている長宗我部家という。
そして結華郷には三つの大名家があり、筆頭である優家、茶道の名家である第二位の五十嵐家、香道をの名家で第三位の櫻月家だ。
その櫻月家に私は嫡女である綾様付きの女中として働いている。働いているというか、女中のような扱いをされている……の方が正しいのかもしれない。