花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜



「これを見て、紗梛さんはどうしたい? 荷物なら言ってくれたら俺が取りに行くが」

「そうですね、でも、行きたいです。自室に隠してある母の香道具があるので取りに行きたいです」


 母が亡くなって全てのものが捨てられてしまったけど、香道具だけは守ってきたものだから……


「そうか。隠してあるのなら、俺にはわからない。一緒に行こう」


 士貴様はそう言ってお茶を一気に飲むと私にゆっくり飲みなさいと告げてこの場から去った。

 その後ろ姿を見ながら羊羹の最後の一口を食べて残っていたお茶を飲むと私も春さんに声を掛けて部屋に戻った。
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