花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜
「そうなのか。料理のことは分からないが、紗梛はなんでも知っているんだな」
「そんなことはないです。私はこれしか役に立てそうにないので……だから」
「紗梛は役に立っているよ。大丈夫……さぁ、食べよう」
士貴様は優しく私に言うと「このきんぴらも絶品だな」と呟きながら食べていて嬉しかった。
そうして食べ終わり、緑茶を士貴様と飲んでいると「お寛ぎのところ失礼致します」と松島さんが士貴様に声を掛ける。
「……なんだ」
「それが、紗梛様にお客様がいらっしゃっていて」
「紗梛に?」
「えぇ、紗梛様のことを紗梛お嬢様と呼んでおりました」
二人は小さな声で話をしているけど、私の名前が聞こえて耳を澄ませる。すると、士貴様に名前を呼ばれた。