花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜
「紗梛さんに客が来ているらしい。早乙女志乃という女性だ」
「……えっ」
早乙女志乃って、母に付いていた女中さんの名前だった気がする。でも、どうして?
「どうする? 会うか?」
「そう、ですね。志乃は、私の母に付いていた女中でした……亡くなる前まで、良くしてもらっていたんです」
「そうなのか。では、客間に通す」
私はお礼を伝えると彼女に会うために髪を整えてから客間に向かった。