花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜
「……ごめんね、志乃っ……私知らなくて」
「いいえ。お嬢様の様子は聞こえてまいりましたのでとても楽しかったです。あっ、お嬢様。私、これを届けにきたんです。紗代様がお嬢様に託したものです」
風呂敷で包まれていたものを志乃が解くとそこから出した。中からは木箱が現れて、それは私が取りに行こうとしていた母の木箱だった。
「どうしてこれを」
「紗代様から頼まれました。紗梛様は隠すのがお得意ではないと言われていたので私が紗梛様が隠した後に私が預かっていました」
「……そうかしら」
そうなの?私、隠すの下手なのだろうか……でも、隠したはずの木箱が彼女のもとにあるってことはそういうことよね。