花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜



「はい。それに、これだけは伝えておきます。もしかしたら、長宗我部様はご存知かと思いますが……紗梛様は今は没落してしまった名家である更科家の血を受け継いでおります。そして、更科家は華の神であられる華乃宮毘売の末裔の家です」


 え、それって士貴様が言っていたことと同じ……更科家は初めて聞いたけど。じゃあ、母は名家の令嬢だったってことだ。


『――きっとあなたを助けてくれる』
 母のその言葉は、私が華乃宮毘売の生まれ変わりだと知っていたのかのようだ。そして、士貴様の存在を知っているかのようなそんな言葉に聞こえた。



 そうして、志乃は櫻月に帰って行った。
 だけどもう私もいないあの家にはいる意味ないからとお暇させてもらうとそう言って……。

 彼女が帰ってから私は木箱を開けた。そこには香道具が一式入っていて櫻月の香道具よりかなりの上等な品だということがわかる。


「こんなに素敵な香道具があるってことは……かなりの名家よね。それに長宗我部家と並ぶ家。そんな家が簡単に没落するかしら……」


 私は初めて知りたいと思った。私自身の起源を、祖先についてを。だから私は、士貴様に話をちゃんと聞こうと決意をした。



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