花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜
「……っと、大丈夫か?」
「あ、士貴さまっ……!」
支えてくださった先には士貴様がいて心配そうに見つめられる。そのまっすぐな瞳に我に帰ると彼から一歩離れて「だ、大丈夫です!」と呟く。
「そうか、ならいいが……無理はしないでくれ」
「はい、ありがとうございます。士貴様、何か御用があったのでは?」
ここは士貴様の書斎から距離があるため、何か用事がないなら来ないだろう場所だから。
「あぁ。紗梛さんにぜひ見せたいと思うものがあって、来てくれるかい?」
「え、もちろんいいですが……」
今、講義中なのにいいのかしらとそちらを見ると『どうぞ行ってきてください』とでもいうような目をされて私は士貴様に頷くと彼の案内でとある場所に案内をされる。