花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜
「……え、士貴様。ここは?」
案内された先は、私が案内されていない場所で来たときはまだ作っている途中の部屋だった。
「紗梛さんの和室。きっと稽古をしたいんじゃないかって思って作らせていたんだ。あの異母姉がの身代わりをしていることは察していたから和室なんて必要ないと思ったが、紗梛さんは香道も茶道も好きなんだろうなと前に行った香席で感じたからね。だから作らせたんだ」
「私のために……ですか?」
「あぁ。それに、もう少ししたら帝都に行く話はしたと思うがその前に長宗我部家で茶会を開こうと思っているんだ。その時、紗梛さんが良かったら香席を開いてもらえたらと思っているんだがどうかな?」
あぁ、そういうことか。でも、香席か……やりたいな。だけど、綾様としてじゃなくて、櫻月紗梛としてやるのはほとんど初めてかもしれない。