花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜



 ***
 

「……聞香炉(もんこうろ)も違うんだな、更科(さらしな)流は」


 母の形見である木箱の中から香道具を取り出した私は、聞香を始めていた。


「はい。母から聞いた話だと、更科流は帝の家老だった当時の当主が帝から香道具を賜ったらしいです」


 鍛錬を図ることを目的である櫻月流の聞香炉は白釉(はくゆう)といって優しい白色が特徴的で落ち着いているものだが、更科流は皇族や貴族らが楽しむためが目的のため蒔絵(まきえ)を施した漆塗りの煌びやかな豪華な聞香炉になっている。

 私も小さい頃に聞いただけなので本当なのか分からないが……




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