花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜
「そうなのか。なかなか面白いな」
「はい。お香の香りも違うんですよ」
「そうなのか?」
「えぇ。香木を六つの産地に分類してその香りを五種の味覚になぞって表現していてそれを『六国五味』と言い、六国は伽羅・羅国・真南蛮・真南伽・佐曽羅・寸門多羅。五味は、甘・苦・辛・酸・鹹というのがあるんですけど……それも違って、更科流では羅国の香りを甘と表すのですけど櫻月では辛と表すんです。お互いに風格があって雰囲気も違って、異なる部分もあります。同じ香道でも……あ」
やってしまった!たくさん話しすぎた……!
「……どうした?」
「話すぎてしまったと思って。すみません、ご存知ですよね!」
士貴様のような方が知らないはずはない。初歩の初歩だもの。