花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜
女学校に行く彼女をお見送りをして私は、お台所のお仕事に取り掛かる。食器を洗い洗濯物も洗って干す。ほとんど雑用の仕事を午前中に済ませると、私の家庭教師の先生がやって来たのでお迎えをした。
妾の子だからと言って教育を受けていないわけではない。母が生きている時、父は母を溺愛していたから私の教育も整えてくれていた。
だから名家の令嬢としてしっかり淑女教育も受けていたし、教養程度は頭の中にある。茶道や華道は幼い頃から両親に連れられお稽古をしていたから師範代だ。そして香道については、父の稽古を受けていたし母からは櫻月とは違う流派の作法を教えてもらっていた。
母が亡くなって六年。令嬢教育がほとんど済めば学ぶことは教養だけだと母と同じ女中として働くことになった。父は母を愛していたため、母がいなくなってからは私に興味がなくなってしまったのかしばらく会っていないために父が私をどう思っているのかは分からないが……もし、政略結婚の駒になったとしても令嬢として振る舞うことができるから役にたてると思っている。