花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜
――そして、現在。私は女中として働きながら、綾様の身代わりで香席を取り仕切る香元をしている。
「本香、焚き始めます。どうぞご安座に」
そう挨拶をして本香を打ち混ぜる。本香包を開けて銀葉の上に香匙で香木を載せて「本香一炉」と言い香炉を出した。正客の人は右隣にお先礼をして香を聞き香炉を回していった。
私はそれからも同じように香を焚き、連衆が手記録に答えを書きそれを執筆係が書き写す。執筆係が走らす筆の音が心地よくて浸っていれば記録紙を渡された。それを確認して正客に渡すと、香炉と同じように回っていき私のところまで戻ってきたのでそれを巻いて本日の最高得点の方に記録紙を渡した。