花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜
「源氏香ですね、それに色も可愛らしいです」
「あら、紗梛様は源氏香をご存知なんですか?」
「あ、はい。私、香道を嗜んでおりまして……」
源氏香は、幼い頃母と一緒に遊んだ組香の遊びだ。まだ作法なども分からなかった時に何度もしていたから懐かしい。
「そうなんですね、源氏香の着物は時の移ろいを表していて香りを装うと言われているんですよ」
そうなんだ……でも確かに源氏香一つ一つ見ると香りが聞けるような気がする。
その後はその他の反物も当てたりして数着と帯や簪などの髪飾りを見て選んで呉服屋を後にした。