花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜
「どう? 美味しいかしら?」
「とても美味しいです。甘くて、こんな美味しい甘味は初めてです」
「それは良かったわ、喜んでもらえて。後から、おはぎや大福も買って帰りましょう」
そう郁世様は言うと女中さんらしき人を呼んで、持ち帰る和菓子を注文していて屋敷に届けるようにと言っていた。
郁世様の話し方や思いやり溢れ、とても温厚なところは士貴様と親子なのだと思える。士貴様の優しいところはお母さま譲りなんだろう……
「そうだ、紗梛さん。明日の夜会は何を着ていくの?」
「はい。士貴様が洋装を仕立ててくださって……だからそれを着ようと思っています」
「そうなのね、ふふ楽しみだわ」
それから食べ終えるとお店を後にした。邸宅に帰ったのは太陽が傾き始めた頃だった。