花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜
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夕餉に並んだのは白米に味噌の煮魚、大根や胡瓜の漬物、吸い物だ。それをお義母様やお義父様、士貴様と食事をした。
それから食べ終わり、お茶を飲みながら談笑をしていると「本当に紗梛さんって似てるわねぇ」とお義母様が呟いた。
「え……似てる、とは?」
似てるってどういう……?
「華乃宮毘売様、にね。士貴から少しは聞いているでしょう?」
「はい。生まれ変わりだと聞いております……そんなに似ているんですか?」
「えぇ。とても似ているわ、士貴も結葉龍神様に似ているし……本当に」
生まれ変わりということは、士貴様から出会ってすぐに聞いたことだ。
だけど、情報としてはそれだけで他に詳しいことは知らない。その華乃宮毘売と似ているのかも分からない。
「……郁世、その話はちゃんとしようと思っていたんだ。紗梛さん、こちらから話を出して申し訳ないが、また明日しっかり話をしたい。いいかな?」
そうお義父様に言われて聞きたいとは言えず、この日はお開きになった。