花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜
◇華乃宮毘売
翌朝になり、私は着物に着替えてから食堂に向かった。食堂には、お義母様が待っていていて後からお義父様がやってきた。
「おはようございます、郁世様。貴文様」
「おはよう、紗梛さん」
お二人に挨拶をするけど、士貴様もやってきて挨拶をしてすぐに朝食が運ばれてきた。
バターロールににんじんや葉物野菜さつまいもにかぼちゃなどの蒸し野菜にバターソース、きのこのポタージュ、トマトのケチャップが添えられたオムレツにベーコンがお皿に綺麗に盛りつけられていた。
「今日はね、うちの近くにある養鶏場で採れた卵なのよ。運んできてくださったのよ」
「そうなんですね、いただきます」
私はナイフとフォークを使いオムレツを一口大に切って、口へ運ぶ。オムレツはふわふわで口の中で一瞬でなくなってしまう。
「とてもおいしいです。ふわっとしていてシュワっと蕩けてしまい、甘さとトマトの酸味がとても合いますね」
「でしょう? ここの卵は、本当に美味しくてね……」
お義母様は献立の食材について話をしてくださった。
帝都で作られないものもあるけれどほとんどが帝都から近くで育てている農家さんからのものらしい。自ら赴いて、契約をしたからと思い入れがあるんだと教えてくれた。
それから朝食の時間が終わって、ダイニングに移動をしてから四人で座った。私と士貴様で隣に座りお義母様とお義父様と向かい合う。
望月さんがお茶を淹れてくれて、お義父様が望月さんと女中の方に退出するように告げれば彼らはお辞儀をして出て行った。
室内は、私たち四人しかいなくなる。お義父様は立ち上がると、茶箱のような頑丈そうな箱を持ってテーブルに置いた。