花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜



「これは当主か次期当主しか見られない代物だ」

「……私は見てもいいんでしょうか?」

「あぁ、君は特別だからね」

「拝見いたします……」


 とても緊張しながらそれに目を向けると【儀式】という文字が見えた。
 それは、当主あるいは次期当主が成人を迎えた年にある儀式でその儀式をした夜に伴侶である相手を特別な池で視ることができるらしい。

 名前はもちろんだが、容姿も視える。一目見て、士貴様は華乃宮毘売と瓜二つだった【更科紗梛】を華乃宮毘売の生まれ変わりだと感じたらしい。私が士貴様に初めて会った時に感じた懐かしい匂いがしたというのは、それと近いものらしい。


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