花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜

◇思わぬ再会



「綾様……」


 久しぶりに会う彼女は、このような公式の場所で着るには相応しくない色を纏っていて驚いてしまう。綾様は、月草色の綺麗な着物を着ているがその色は帝の色だ。

 皇族には、生まれるとそれぞれの色が与えられる。ほとんど高貴な色とされる紫が与えられており現帝は月草色で東宮様は杜若色、女御様には嫁入りの際に菫色が与えられている。

 貴族にも象徴する色があるが、個人には与えられなくて家の色があるだけだ。櫻月家は桜色と決まっており、公式な場では桜色を身につける義務がある。それが自分は反旗を翻しませんという意味になるからだ。

 なのに、綾様は皇族の色を纏い公式の場に出てきた。これは反逆者と言われても仕方がない……だれも教えてくれなかったのかしら。そう思って周りを見れば、みんな目を逸らす。


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