花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜
「そうだね、櫻月家の櫻月綾さん。もしかしたら、君がいたかもしれない。じゃあ、なればいいんじゃないかな? チャンスはあるかもよ?」
そう言った東宮様は、挑戦的な目をしていたが綾様は彼の表情は見ずに喜んだ表情をした。
「ほら! やっぱり高貴な方は分かっていらっ――」
東宮様はまた綾様の言葉を遮る。
「君たちは香道の名家出身だ。どちらが長宗我部家に相応しいのか、香席を開いてもらおう」
「……ぇ」
「今夜は城の部屋を貸そう。お互いが会わないように部屋を分けようか。君たちは顔は似ているからね」
綾様は反論しようとしたが、ここで反論したらそれこそ皇族への不敬により捕まってしまう。だから、俯き「分かりました」と小さな声で呟いた。