花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜



「長宗我部家の当主が、ぜひ綾に会いたいと言う手紙が届いた」

「えっ! 長宗我部家のご当主様って、長宗我部士貴さま!?」

「あぁ、そうだよ。成績優秀で、香道の他にも茶道や華道もできる淑女の鏡のような女性に会いたいそうだ。綾が頑張っている証拠だな」


 父がそう言えば、正妻で綾の母も「そうね、さすが私の娘ね!」と賛同する。だが、綾だけは気まづそうな表情をしているだろう……それは、自分が作った功績ではないし……


「こうしちゃいられない。綾、お迎えする準備をしなくては! それに香席の準備もあるしな」

「え、香席?」

「あぁ。香道の名家だからなもてなしはお香を聞いてもらわないとな。それに優秀だと言われている綾が香元をすればこの家も安泰だといろいろ支援をしてくれるかもしれんしなぁ……昔はなぁ、綾にはセンスないと思っていたが良かった」


 父は笑いながら私に「お茶を淹れてくれ」とご機嫌に告げた。私は、父には熱いお茶を淹れ正妻の方には少し温めを綾様も正妻の方よりも熱いお茶を淹れた。


「本日は玉露でございます。旦那様がお取り寄せされた茶葉が届いたのでその茶葉で淹れてみたのですがいかがですか?」

「あぁ、あのお茶か……美味しいよ。紗梛は、紗代(さよ)に似て来たな……彼女もお茶を淹れるのが上手でね」


 父はご機嫌すぎたのか、目の前に正妻や綾様がいるのにもかかわらず私の母を褒める。それによって、彼女らから睨まれて居心地が悪くなった私は父に挨拶をし彼女らに礼をしてから退室した。



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