別居恋愛 ～もう一度恋からはじめよう～

「ううん。私は好きでやってるだけだもん」
「うん。でも、ずっと働き続けてたら疲れるはずだろ？　だから、おあいこ。本当に大丈夫だから、心配しなくていい。あのな、俺、後悔したんだよ」
「え？」
「瞳、一回だけこっち帰ってきただろ？　あのとき瞳に言ってしまった言葉、ずっと後悔してる。自分がちゃんとできてないことわかってたから、それを指摘されるのが嫌であんなことを言ってた。でも、それで何よりも大事なものを傷つけた。瞳のこと傷つけた。だから、もうそうならないように変わりたかった」

　二人の関係がよくなった今もあのときの後悔は消えてなくならない。きっと一生残り続ける。瞳を傷つけることは、それくらい拓海に痛みをもたらすことなのだ。

「え、違う。違うよ。謝りたかったのは私だから」
「いや、瞳は何も悪くないだろ？」
「だって、私の言葉のせいで拓海は不快な気持ちになったでしょ？　でも、あのとき本当に言いたかったのはあれじゃなかったの。やるべきことやってくれてるって言いたかった。それなのに、最初にあんなこと言っちゃって、嫌な気にさせた」

　そういえば、瞳の言葉を遮って声を発していたのだと思いだした。あのとき何も言わずに、瞳の言うことをちゃんと聞いていれば、瞳を傷つけることも自分が苦しくなることもなかったわけだ。本当にどうしようもなくバカだったなと思う。

「ごめん。俺が遮るようにあんなこと言ったから」
「ううん。そうさせたのは私だから。私ね、聖と二人暮らししてよくわかったの。拓海がたくさん助けてくれてたって。だから、もっと拓海に感謝しないといけないなって思った」
「それは俺もだ。瞳がいなくなったら、いろんなところが気になりはじめて、瞳がどれだけこの家を大切にしてたのかわかった。俺も瞳に感謝しないといけないって思った。文句ばかり言ってないで、俺ももっと頑張ろうって思ったんだよ」
「拓海……ありがとう、拓海。拓海の気持ち嬉しい。でも、やっぱり無理はしないでほしい。嫌なことは嫌って言ってほしい。お願い」

　瞳は泣きながら懇願するようにそう言ってきた。きっと不安でならないのだろう。自分がこんなにも瞳を追い込んでいたのかと思うととてもつらかった。拓海が大丈夫だと言っても瞳の不安は消えてなくならない気がする。瞳が何の憂いもなく、ただただ自然に拓海に甘えられるように、これからの時間で大丈夫だと証明していくしかない。