別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
「なんでそんなに余裕なんだよ」
「別にそういうわけではないけど……ただすごく安心したから」
「安心?」
「うん。ちょっと怖かったんだよね。ちゃんとできるのかなって。拓海も私も」

 そんな不安を与えていただなんて、全然気づいていなかった。パートナーとして情けなくてたまらない。

「瞳……」
「でも、全然問題なかったね。不安になる必要なかった」
「ずっと不安だった?」
「わからない。それが当たり前になっちゃってたから……でも、淋しいなとは思ってた」

 その告白に苦い気持ちが湧いてくる。こんなにも大事な人を、長いこと大事にできていなかった。一緒に暮らしておいて、淋しい気持ちにさせていただなんてパートナー失格だ。

「ごめん、瞳。本当にごめんな。淋しい想いさせて。もう絶対そんな想いさせないから。ちゃんと俺の気持ち伝えていく。瞳のこと愛してるって飽きるくらい言うから」
「ありがとう、拓海。私もちゃんと自分の気持ち言うね」
「ああ。もう淋しい気持ちにはさせないけど、もしもそうなってしまったときは絶対に言えよ? すぐに瞳のこと抱きしめてやるから」
「ふふ、うん。すぐに言う。いっぱいぎゅってして?」
「もちろん。いつだってしてやる」
「嬉しい。大好き、拓海」

 そう言って笑顔を見せてくれる瞳が本当に愛しくて、拓海はぎゅっと瞳を抱きしめた。

「ああ、やっぱり俺の奥さんかわいすぎる。かわいくてたまんない。そうやって一生俺のこと翻弄してろ」
「ふふ、何それ」
「お前に翻弄されてたいんだよ」


 二人は眠りにつくまで甘い言葉を囁き合った。最高に甘くて幸せな夜だった。そして、朝目覚めても二人はまだ幸せに包まれていた。
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