別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
すぐに電話口から母の声が聞こえてきた。
『お母さん、おばあちゃんのこと聖に聞いた。聖、お母さんとおばあちゃんが話してるとこ聞いちゃったみたい。引っ越したくないって言ってたよ』
『あー、聞かれてたのね。そっか』
『ねぇ、なんで私に言ってくれなかったの?』
『まだ何も決まってないの。あとで言うつもりだったのよ』
『あとでじゃなくて、普通に相談してよ』
『相談ていっても、瞳はもう家を出たんだから、そうそう頼るわけにいかないでしょ』
瞳はいつの時代の話なんだと言いたくなった。拓海も拓海の両親も、結婚したらもう嫁は婚家の人間だ、なんてそんなことを言う人たちではない。本当に困っているときに手を差し伸べたって怒るはずもないだろう。
『なんでよ。結婚しても家族なんだから頼ってよ』
『そうはいってもねー』
『とにかく私も協力するから』
『ふふ、わかった。ありがとう』
瞳の意思が強いとわかったのだろう。母は断らずにちゃんと瞳の気持ちを受け取ってくれた。
『半年くらい家空けなきゃいけないんでしょ?』
『そうね。今のところはそういうことになりそうね』
『じゃあ、その期間は私が実家帰って聖の面倒みるよ。私の仕事はどこでもできるし』
現実的に考えてそれが一番の解決策だと思った。中学生の聖を半年も一人にはできない。比較的自由に動ける瞳が実家に行くのが最善策のはずだ。
『え? さすがにそれは拓海くんに悪いわよ』
『そんなことないって。たぶん、行っていいって言ってくれると思う』
『うーん、でもねー』
『だって、聖、今年受験でしょ? 環境は変えないほうがいいと思う。聖、頑張ってるでしょ?』
『そうなのよねー。私も聖を一緒に連れていくのはどうかとは思ってたのよ』
完全に祖母宅のほうへ引っ越すならまだしも期間限定のことだ。受験先はこっちの高校なわけだし、こちらで受験に備えるほうが絶対いい。それに中学最後の年というのは、地元の友達と過ごせる貴重な時間でもあるから、やはり今の場所で過ごさせてあげるほうがいいと瞳は思っていた。
『でしょ? 拓海も聖のことかわいがってるからさ、聖のためならわかってくれると思う。今日、話してみるからちょっと待っててくれる?』
『うん……ごめんね、瞳』
『そこはありがとうじゃない?』
『ふふ、そうね。ありがとう、瞳。でも、無理だったら遠慮しなくていいからね。何か他の手考えてみるから』
『うん、わかった。でも、たぶん大丈夫だから』
瞳は確信を持ってそう答えていた。でも、その確信はポジティブな理由からではなくてネガティブな理由からくるものだった。そのことに瞳は小さく切ないため息をこぼしていた。
『お母さん、おばあちゃんのこと聖に聞いた。聖、お母さんとおばあちゃんが話してるとこ聞いちゃったみたい。引っ越したくないって言ってたよ』
『あー、聞かれてたのね。そっか』
『ねぇ、なんで私に言ってくれなかったの?』
『まだ何も決まってないの。あとで言うつもりだったのよ』
『あとでじゃなくて、普通に相談してよ』
『相談ていっても、瞳はもう家を出たんだから、そうそう頼るわけにいかないでしょ』
瞳はいつの時代の話なんだと言いたくなった。拓海も拓海の両親も、結婚したらもう嫁は婚家の人間だ、なんてそんなことを言う人たちではない。本当に困っているときに手を差し伸べたって怒るはずもないだろう。
『なんでよ。結婚しても家族なんだから頼ってよ』
『そうはいってもねー』
『とにかく私も協力するから』
『ふふ、わかった。ありがとう』
瞳の意思が強いとわかったのだろう。母は断らずにちゃんと瞳の気持ちを受け取ってくれた。
『半年くらい家空けなきゃいけないんでしょ?』
『そうね。今のところはそういうことになりそうね』
『じゃあ、その期間は私が実家帰って聖の面倒みるよ。私の仕事はどこでもできるし』
現実的に考えてそれが一番の解決策だと思った。中学生の聖を半年も一人にはできない。比較的自由に動ける瞳が実家に行くのが最善策のはずだ。
『え? さすがにそれは拓海くんに悪いわよ』
『そんなことないって。たぶん、行っていいって言ってくれると思う』
『うーん、でもねー』
『だって、聖、今年受験でしょ? 環境は変えないほうがいいと思う。聖、頑張ってるでしょ?』
『そうなのよねー。私も聖を一緒に連れていくのはどうかとは思ってたのよ』
完全に祖母宅のほうへ引っ越すならまだしも期間限定のことだ。受験先はこっちの高校なわけだし、こちらで受験に備えるほうが絶対いい。それに中学最後の年というのは、地元の友達と過ごせる貴重な時間でもあるから、やはり今の場所で過ごさせてあげるほうがいいと瞳は思っていた。
『でしょ? 拓海も聖のことかわいがってるからさ、聖のためならわかってくれると思う。今日、話してみるからちょっと待っててくれる?』
『うん……ごめんね、瞳』
『そこはありがとうじゃない?』
『ふふ、そうね。ありがとう、瞳。でも、無理だったら遠慮しなくていいからね。何か他の手考えてみるから』
『うん、わかった。でも、たぶん大丈夫だから』
瞳は確信を持ってそう答えていた。でも、その確信はポジティブな理由からではなくてネガティブな理由からくるものだった。そのことに瞳は小さく切ないため息をこぼしていた。