別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
「瞳!」

 地図を確認しながら歩いていくと、会社の前に出ていた拓海が瞳に向かって手を上げていた。瞳は自分の動揺を悟られないようにとふーっと大きく息を吐きだしてから、拓海に近づいていった。

「ごめんな、瞳」
「ううん。これで合ってる?」
「うん、これだよ。ありがとう。本当に助かった」
「よかった。じゃあ、お仕事頑張ってね」
「ああ。本当にありがとな」

 長居するとおかしな態度を取ってしまいそうだったから、瞳はすぐに踵を返して自宅へと帰っていった。

 自宅に戻れば、取りだしてそのままにしていた離婚届が目に入ってくる。瞳はもうそれを見ていたくなくて、もともと入っていた場所にしまうと、痛みに耐えるようにしばらくの間蹲っていた。
< 123 / 156 >

この作品をシェア

pagetop