別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
「一体どうしたの?」
「うん……」
「西浦と何かあった?」
「……」
「上手くいってるんじゃなかったの?」
「うん……」

 上手くいっているはずだった。すべてが順調だと思っていた。けれど、あれは紛れもない現実だった。


 瞳が何も言えないでいると芳恵は一度キッチンへ消えたあとに、缶チューハイを持って戻ってきた。

「はい。飲んだら少しは言いやすくなるんじゃない?」
「……ありがとう」

 酒に逃げるようで少し後ろめたい気持ちにはなったが、それよりも縋りつきたい気持ちのほうが大きくて、瞳は大人しくそれを受け取って、ちびちびと飲みはじめた。

 瞳がゆっくりとそれを飲んでいく中、芳恵は何も言わずにすぐそばに寄り添ってくれている。

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