別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
 瞳は持っていた酒をすべて飲みきったところで、ようやくその口を開いた。

「芳恵」
「うん?」
「今日ね、拓海の忘れ物探すために、拓海の鞄の中見てたんだけど、そしたら……」
「そしたら?」
「……鞄の中のポケットに……」
「うん」

 次の一言がとても重い。それを口にするとより現実味を帯びてしまいそうで嫌だ。でも、もうこのまま一人で抱えているのも耐えられなくて、瞳は小さな声でついにその言葉を漏らした。

「……離婚届……が入ってた」
「え……」

 芳恵の驚いた表情を目にしたら、じわじわと実感が湧いてきて、瞳はとうとう涙をこぼした。

「うっ……なんでだろう……」
「瞳……」
「芳恵っ」
「西浦には聞いてないの?」
「……怖くて、逃げてきた……」
「そっか……」

 瞳が泣きじゃくる中、芳恵はずっと瞳の背中を擦り続けてくれた。
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