別居恋愛 ～もう一度恋からはじめよう～

『もっしもーし。お前から電話って珍しいじゃん』
『おい、優。お前、俺の鞄に離婚届入れたか？』

　挨拶など今はどうでもいいと拓海はすぐさま本題に入った。

『あ、何、お前ようやく気づいたわけ？』

　やはり犯人が優であるとわかり、しかもまったく反省していないその発言を聞き、拓海の心は激しい怒りで覆われていく。今にも頭の血管が切れそうだ。拓海はもうその感情を抑えていられなくて、電話の向こうの優へ激しく怒声を浴びせた。

『ふざけんな！　お前絶対に許さないからな』
『えー、そんな怒んなよ。一緒に分かち合ってくれよ。それで危機感持てれば、拓海も頑張れるだろ？』
『お前と一緒にすんな。こんなものなくても瞳のためならいくらでも頑張れる』
『相変わらずすごい溺愛ぶりだな』

　拓海が怒ってもまったく反省する気配のない優にまた怒りがこみ上げてくる。瞳を傷つけたことがどうしても許せなくて、拓海は激しい怒りの言葉をさらに優へぶつけそうになったが、瞳に手をきゅっと握りしめられて、その言葉を思わず飲み込んだ。代わりに瞳が優へ激しい怒りをぶつけた。

『戸田！　あんた絶対許さないからね！』
『えっ、相澤？　もしかして相澤にばれた？　それは……ごめん。でも、悪い意味じゃないってば』
『やっていいことと悪いことの区別もつかないの？　今回ばかりは本当に無理。本当にふざけるな……ふっ……うっ』

　瞳はぼろぼろと涙をこぼしてまた泣きはじめた。

『え？　相澤もしかして泣いてんの？　え、ごめん……』
『もうお前とはしばらく連絡取らん。一人で反省してろ』

　これ以上は優を追及するよりも、大事な瞳を慰めるほうが先だと、拓海は優に冷たく言い捨ててから電話を切った。瞳はまだ泣き続けている。