別居恋愛 ～もう一度恋からはじめよう～

　あまりに幸せすぎて思わずため息をこぼせば、隣からくすりと笑う声が漏れてきた。そして、それをきっかけにして、拓海はとても優しい声で語りはじめた。

「なあ、瞳。瞳は子供欲しい？」

　少しも予想していなかった話題だから、瞳は驚いて大きく目を見開いた。拓海はもう欲していないのだと思っていたのだ。

　結婚当初は子供のことを考える余裕はなくて、いずれ考えようと保留にしていた。そのうち余裕ができればまた話し合うのだろうと思っていたが、次第に肌を重ねることがなくなり、子供の話も一切してこなかったから、てっきり拓海は望んでいないものだとばかり思っていた。

　瞳自身はもとから強く望んでいたというわけでもないし、会話すらあまりできていなかったあの状態で子供を持つなんて考えられなかったから、子供を持つ人生はもう自分には訪れないものだと思っていた。

　でも、拓海との関係が改善しだして、少しだけ、本当に少しだけそういう未来を考えてみたことはある。家族が増えたら、それはそれで楽しい日々になりそうだなと少しだけその光景を想像したのだ。

「私は……子供がいたらきっと嬉しいだろうなって思う。でも、拓海と二人の人生も私はいいなって思うよ」
「そうだな。俺も思うよ。子供がいてもいなくても、瞳がいれば嬉しいし、楽しい人生になると思う」
「ふふ、だよね。あのね、聖と二人で暮らしてみたらさ、いろいろと大変だったの。だから、子供育てるのはきっと簡単なことじゃないだろうなって思う。でも、拓海がたくさん助けてくれて、こういうのいいなーって思ってた。家族で協力し合って、成長していくのがいいなって。だから、子供が欲しいっていうよりも、拓海と私の家族の中に新しい仲間が増えるのならいいなって思う」

　実家で三人で過ごしていたとき、拓海に助けてもらって、瞳は少しずつ自分のペースで暮らしていけるようになった。聖も瞳と拓海の言葉を聞いて、少しずつ協力してくれるようになった。そうやって家族の形を作り上げていくのは、とても尊くて幸せなことだと感じていたのだ。