別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
 そんなわけで瞳は日に日に鬱憤が溜まり、実家に帰って二週間が経った頃、溜まった鬱憤をどうにかしたくて芳恵に電話で泣きついた。誰かに愚痴を言いたくてたまらなかったのだ。

『もう、芳恵ー。聖が立派な中学男子に成り下がってるー』
『は? 何それ?』
『だって、聞いてよ』

 瞳は聖との間で起きたあれこれを芳恵に語って聞かせた。かなり興奮気味に話していたと思う。もう本当に爆発寸前だったのだ。

『あはは。瞳もう立派なお母さんじゃん』
『やめてよ。私は聖のお姉ちゃんなの。聖をかわいがって過ごせると思ったのに、こんな仕打ちない……』

 芳恵の言う通り、これではもうお母さんだ。聖の面倒をみると言ったとはいえ、こんな状態になるとは予想もしていなかった。もっと弟との楽しい時間が待っていると思っていたのだ。

『小学生の聖は本当にかわいかったもんね』
『そうなの。あの頃は本当にかわいかった。いや、今でもかわいいよ? たまに実家に帰ったときにはいっつもかわいいと思ってたもん。でも、一緒に暮らしてよーくわかった。あいつはもう中学生男子なんだって』
『中学生男子を一括りにしてやるなよ。ふふ、でもさ、淋しくはなさそうだね。楽しそうじゃん』

 そう言われて瞳は淋しさを感じなくなっていたことに気づいた。だが、すぐに感じる余力もなくなっていただけだと思い直す。

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