別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
 食事は基本的にスーパーで買ってきた弁当を食べるか、時々は外食で済ませる。弁当の空き箱などのごみは買ってきたときの袋に入れ、邪魔にならない場所に置いておく。いつもならしっかり分別して決まったごみ箱に入れるが、ごみの日にまとめて捨てれば十分だろう。

 洗濯物は毎日するのは面倒で二日に一回洗濯機を回す。洗い終えた洗濯物のうち頻繁に使うものはタンスの中にまではしまわず、取りやすい場所に置いておく。それも寝室に軽く置いておく程度だから、誰か客が来ても困りはしない。

 掃除は毎日やるのではなく、週末にまとめてやるようにした。どうせ平日はほとんど家にいないのだし、週一回の掃除で十分だと思ったのだ。そして、休日は昼近くまで惰眠を貪り、ゆったりと一日を過ごした。


 それは独身時代の生活そのものだった。さすがに家の中をごみ屋敷にしたり、散らかり放題の部屋にしたりはしない。ただ、毎日毎日きっちりとした生活を送るわけではなくて、不快にならない程度に家のことをやる。仮に誰か人が来ても困らない程度には片づけているのだから、これで何の問題もないと拓海は思っていた。

 そうして一週間、二週間と時が経ち、食事に関してだけは瞳の料理が恋しくなった。炊事だけは完全に瞳に任せきりだったから、拓海自身はチャーハンだとかカレーだとか簡単なものしか作れない。作るのも面倒だから、スーパーの弁当に頼ってしまうが、二週間も経つと飽きてきた。

 瞳は何も言わずとも拓海の好みを把握し、飽きのこないように様々な献立を考えてくれていたから、いつも普通に美味しく食事を楽しめていた。そう普通に楽しめていたのだ。あまりにも当たり前のことになっていて気づかなかったが、飽きずに毎日普通に美味しく食べられるというのは普通のことではなかった。弁当に飽きてきた今、それがよくわかった。

 だから、食事だけは瞳が作ったものが恋しいと思ったが、それ以外に関しては特に困らなかった。何でも適度に済ませる生活はやはり楽だった。半年この生活が続いても別にいいと思っていた。
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