別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
 結局、優といても瞳のことばかり考えてしまうから、拓海は一時間くらいで優に別れを告げて自宅へと帰った。

 自宅への道中、拓海は優から言われた言葉がずっと脳裏から離れなかった。優の言う通り、実は瞳は別居を喜んでいて、このまま離れて暮らすことを望むのではないかという焦りが生まれていた。頭ではそんなことないとわかっていても、今日の瞳の表情を思いだすたびに、瞳の心が離れてしまったようなそんな気がして落ち着かない。きっと二人で暮らしている状態だったら気にも留めなかっただろうが、すぐに会えない今は不安ばかりが募ってしまう。

 拓海はその不安をどうにか振り払いたくて、家へ帰るとすぐに瞳に電話をかけていた。

『もしもし? どうしたの?』

 瞳がすぐに出てくれたことに、その声音が普通であることに拓海はほっと息をついた。

『あー、その……今日ひどい態度とってごめん』
『え?』
『ごめんな』
『え……ううん。私こそごめんね。うるさく言って』
『いや……じゃあ、それだけだから』
『え、それだけ?』
『ああ。じゃあな』
『あ、うん。じゃあね』

 勢いで電話をかけたものの、他に何を話せばいいのかわからなくて、拓海はすぐに電話を終えてしまった。でも、電話越しの瞳の声は少しだけ明るく聞こえたから、拓海の気分も少しだけ上昇していた。顔を見ての会話じゃないから完全に不安を拭えたわけではないが、それでも幾分かマシだった。

 次に瞳と会ったときには、もっとちゃんと向き合おうと思った。二人の関係が壊れてしまわないように。だって、瞳は拓海が望んで望んで手に入れた人なのだから。
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