別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~

3. 馴れ初め

 瞳との出会いは大学一年生のとき。きっかけは同じサークルに入ったことだった。拓海は惚れやすいタイプではないのだが、瞳には出会ったその日に惹かれた。一目見て好きになったというわけではないから一目惚れと言っていいかはわからないが、それでもほんのわずかな時間で拓海は瞳に惹かれたのだ。

 拓海がそのサークルへ入ったのは優にどうしても一緒に入ってほしいとお願いされたからだが、瞳もどうやら拓海と同じように友人に連れられてやってきたようだった。下山に手を引かれて無理やり連れてこられたふうだったのだ。

 けれど、なぜか瞳は下山よりも真剣に先輩の話を聞いていて、拓海はそんな瞳に好感を抱いたのだ。大半の人は飲み会目的でやってきているから割とテニスの話はそっちのけで別の話題で盛りあがっているのに、瞳はテニス経験がないからと必死にテニスのことを聞いて覚えようとしていた。変に真面目なその姿が拓海にはとてもかわいく映った。そういうふうに何でも一生懸命にやれるのはいいなと思ったのだ。

 拓海は普段積極的に女の子に話しかけたりしないのだが、そのときはどうしても瞳と近づきたくて、拓海は瞳が会話をしている輪の中に入り込むとタイミングを見計らって瞳に話しかけた。変にアプローチを仕掛けているとは思われたくなかったから、サークルの話にかこつけて、自分のことを話したり、瞳のことを聞いたりした。

 瞳はそんな拓海との会話にもまったく嫌がる素振りは見せず、終始笑顔で応えてくれた。初対面の拓海の話でもとても真剣に聞いてくれるから、拓海はますます瞳に惹かれた。もっとこの子と仲よくなりたいと思った。

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