別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
 それから拓海はそのグループを利用して瞳との距離を縮めていった。瞳は恋愛慣れしているように見えなかったから、二人きりで会うようなことはせず、いつも四人で会っていたが、それでも瞳と会ったときには積極的に話しかけて、なんとか自分に気を持たせようと頑張っていた。一ヶ月が過ぎる頃には拓海はもう完全に瞳を好きになっていたが、瞳の気持ちがどうかはわからなくて、ずっと同じ距離感で付き合い続けた。


 そして、そんな関係のまま一年と少しが経った頃、拓海は意を決して初めて瞳だけを誘って二人で遊びに出かけたのだ。拓海はデートとは言わずに、ただ二人で遊びに行こうと言っただけだったから、瞳がそれをどう捉えたのかはわからなかったが、瞳は少しも嫌な顔はせずにその誘いに乗ってくれた。

 有名な商店街でただ食べ歩きをするだけのものだったから、二人きりでいてもいつもの空気と変わらなくて、二人はいつものように楽しく過ごした。瞳はそれがデートだなんて意識していなかったかもしれないが、拓海はデートのつもりでその日を過ごしたし、その日の終わりには二人の関係を変える言葉を告げようと思っていた。下山から瞳にちょっかいをかけようとしている男がいると聞いて、すぐにでも動かねばならないと思っていたのだ。

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