別居恋愛　～もう一度恋からはじめよう～
　そして、そのデートの帰り道、拓海は何度も頭の中でシミュレーションした言葉を瞳に告げた。瞳が好きだ、自分と付き合ってほしいとそう言ったのだ。

　拓海には、これまでの時間で瞳との距離が近づいているという自覚はあったが、瞳に恋愛感情があるかどうかまではわからなかった。だから、瞳からどういう返事がくるのかはまったく予想できなくて、どうか受け入れてくれと必死に祈りながら瞳の返事を待った。

　そうして必死に拓海が祈っている一方、瞳は拓海の告白に大層驚いているようだった。拓海が告白の言葉を口にしてから数十秒の間、瞳はただ「え？」と繰り返すばかりだったのだ。拓海が告白するとは思っていなかったらしい。瞳のその反応に、全然意識されていなかったのだろうかと拓海は不安になったが、それもほんの少しの間だけだった。

　瞳は恥ずかしそうにしながらも、自分も好きだと言い、よろしくお願いしますと拓海の告白に応えてくれたのだ。告白を受けてくれただけでも嬉しいのに、瞳と両想いだとわかって、拓海はもう天にも昇る気持ちだった。

　しかも、瞳は告白を受けると同時に誰かと交際するのはこれが初めてだと教えてくれて、拓海は瞳のその告白に、自分が瞳の初めての男なのだという優越感でいっぱいになった。こんなに素敵な人を最初に射止められた自分が誇らしかった。

　そして、こうも思った。瞳が知る男は自分だけだと。付き合ったばかりだし、自分の将来のこともまだよくわかっていなかったけれど、それでも瞳とはずっと一緒にいたいと思ったし、ずっと一緒にいるだろうと思った。瞳と離れる未来なんて一瞬たりとも思い描かなかった。
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