別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
「姉ちゃん、焼肉食べたい」
「焼肉か……うーん、じゃあ、今度食べにいこうか」

 焼肉自体はいいのだが、家でやると匂いが気になるし、油汚れも気になるから、外食にしてしまおうと思って瞳はそう答えた。

「俺、家で焼肉がいい」
「え、家で焼肉するほうがいいの? お店に行くより?」
「うん」
「えー、そうか。家でか」

 外で食べるほうが聖も喜ぶと思ったから、まさか反対されるとは思わなかった。瞳としてはあとのことを考えるとあまり気乗りしないのだが、片づけを理由に断るのもかわいそうだ。どうするべきかと瞳が悩んでいたら、聖がさらなる要望を告げてきた。

拓兄(たくにい)も呼んで、三人で焼肉しようよ」

 それを聞いて本当の目的はそっちなのだとわかった。焼肉は拓海と遊びたいがための口実だろう。拓海は本当に面倒見がいいから、聖は拓海のことをとても慕っていて、事あるごとに会いたがる。前回二人があったのはもう半年以上も前だからきっと恋しくなってきたのだろう。

 弟のそんなかわいい願いだとわかれば断れるはずもない。後片づけは多少面倒だが、たまには悪くないかと瞳はその提案に乗ってやることにした。

「なるほど。拓海に会いたいわけね。まあ、たまにはいいか」
「いいの?」
「いいよ。でも、拓海は聞いてみないとわからないからね?」
「うん、わかってる」

 聖の頼みとわかれば、拓海は断らないだろうが、電車移動で二時間半くらいはかかるからそんなに気軽に来れる距離ではない。もし拓海が来られないようだったら、二人でお家焼肉をしてやろうなんて考えつつ、瞳は拓海にお願いの電話をかけたのだった。
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