別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
「俺は料理はできないんだよ。まあ、カレーとかなら作れるけど」
「俺カレーも作れない!」

 そんなこと自慢げに言うなと思っていたら、その思いを拓海が代弁してくれた。

「お前、それは自慢げに言うことじゃないだろ。俺が言うのもなんだけど、少しはできるようになっといたほうがいいぞ?」
「えー、でも面倒くさいし」
「その面倒くさいことを瞳がいつもやってくれてるんだろ? ちゃんと感謝しろよ?」
「うん」
「瞳、いつもありがとうな。俺、瞳の料理好きだよ」

 今日の拓海はどうも様子がおかしいようだ。先ほどから随分と優しい言葉ばかりかけてくれる。ものすごく嬉しいが、同時にとても恥ずかしいし、訝しくも思ってしまう。

「……どうしたの? そんなこと普段言わないじゃん……」
「うん。だからだよ。言ってなかったなって。瞳と離れてから気づいたんだよ。瞳の料理は美味しかったなーって」
「そう、なんだ。まあ、美味しかったならよかった」
「うん。今日瞳の料理食べられてすげー嬉しい」
「そう……なんかごめんね。サンドイッチとかで。もっと何か作ればよかったね」
「いや、この厚焼き玉子サンド好きだから、嬉しいよ」
「そっか……じゃあ、よかった」

 あまりにも褒めてくるから瞳は顔が熱くなってしまった。結婚してすぐの頃はよく褒めてくれていたが、最近はこんなことまったく言われていなかったから、恥ずかしくてたまらない。聖の目の前で言われている状況もそれに拍車をかけていた。このままだと拓海にも聖にも照れていることがばれそうで、瞳はそれ以上の会話は控えて、黙々とサンドイッチを食べていた。
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