別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
「じゃあ、姉ちゃんの罰ゲームはー、拓兄にチュー!」

 予想外な罰ゲームに瞳は面食らってしまった。そういうことに興味がある年頃なのかもしれないが、姉にそれを振るのをどうかと思った。

「はあ!? このませガキが! あんた自分の姉のラブシーン見て楽しいわけ?」
「えー、楽しい! 姉ちゃんが恥ずかしがってんの面白いもん」
「あんたねー。姉をからかって楽しむな。あ、あんたにしてやろうか。ほら姉ちゃんがかわいい弟にチューしてあげる」

 結果のわかりきった勝負に乗ってやっていたのだ。大人しく従う必要もないだろう。瞳はわざとらしく唇を尖らせながら、拓海を挟んで奥に座っている聖ににじり寄った。

「うわっ、やめろ! キモイことすんな!」
「ひどい。大好きな姉ちゃんでしょ?」
「自分で言うなし! もういい! いいから、すんな」
「えー、姉ちゃんは年の離れた弟をかわいがりたいんだけどな。ほら、おいでおいで」
「行くわけないだろ。もういいってば!」

 聖は拓海を盾にして逃げまどっている。

「はは。聖はまだまだだなー。お前が瞳に勝つには百年早いわ。おい、瞳。その辺にしとけよ。思春期の少年いじめてやんな」
「しょうがないなー。拓海に免じて勘弁してやるか」

 もともと本当にするつもりはなかったから、瞳はその仲裁に素直に従うことにした。聖はあからさまに安堵のため息をついている。そこまで拒否されると姉としては複雑な気持ちだ。

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