別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
「「かんぱーい」」
「瞳、最近よく誘ってくれるけど、旦那はいいわけ?」

 芳恵との約束の日。乾杯のあと早々に痛いところを突かれて瞳は苦笑を漏らした。

「いいの、いいの。あっちも戸田とよく飲みいくんだからお互い様でしょ」
「戸田か……まだあいつとつるんでんだね」
「なんだかんだ仲いいからね。あの二人」


 戸田優(とだまさる)は拓海の幼馴染だ。本当に小さいころからの付き合いらしい。瞳と芳恵はそんな二人と大学時代に知り合ったのだが、それは実にありふれた出会いだった。

 瞳は地元から少しだけ離れた大学に進学しており、瞳の学部には誰も知り合いがいなかった。最初の説明会の時点ですでにいくつかのグループができており、瞳はどこかに入れてもらおうかななどと考えていたのだが、そこに声をかけてくれたのが芳恵だった。気さくな人柄の芳恵とはすぐに仲よくなったから、大学ではいつも二人一緒にいたし、学外でもよく会っていた。

 そして、そんな芳恵に誘われて、いや、ほぼ強制的に連れていかれたサークルで知り合ったのが拓海と戸田だった。大学に入ったからにはテニスサークルに入って出会いを求めたいという何とも不純な動機で瞳はそこに連れていかれたのだが、拓海と戸田もまったく同じだった。出会いを求める戸田に無理やりサークルに連れてこられたのが拓海だったのだ。同じ理由で同じサークルに入ったからか、瞳は拓海とすぐに打ち解けた。おそらく瞳は早い段階で拓海に惹かれていたのだと思う。そして、芳恵はそんな瞳の気持ちをすぐに見抜いて、わざと拓海たちと過ごすように計らってくれていたらしい。だから、大学四年間は四人で過ごすことが本当に多かった。

 さすがに大学を卒業すると四人で会うことはほとんどなくなったが、瞳は芳恵と、拓海は戸田との友人関係を今も続けている。

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